東京永久観光

【2019 輪廻転生】

日本列島社会主義化計画

最近なんとしてもニートを働かせねばと政府などは躍起になっているみたいで、そのひとつ「若者自立塾」とかいう事業が報じられていた。ニートを集めた矯正合宿をNPOなどにやらせるらしい。1200人が対象で、まずは税金9億8000万円が使われる。だったらどうだろう、大勢の手を煩らわせるより、いっそ1人あたま80万円余り直接ばらまいてみては。そのほうがニート自身むしろすかっとヤル気も出るのでは。…などと無茶なことを考えずにいられない梅雨のジメジメ。しかし実際、意欲に恵まれない者もいれば、たんに金や金になる仕事に恵まれない者もいるだろう。

この事業の音頭をとるのは、財団法人社会経済生産性本部というところ。9億8千万円の公費は厚生労働省からクネクネとぶんどってきた。もちろんこの団体そのものに毎年毎年流れる補助金等の総額はその程度ではすまない。まあこの手の隠れ省庁的な団体なんて日本には腐るほど、というか腐って湧いてくる虫ほど無数にあるようだから、いちいち気にしてもいられない。それでもそうした団体のサイトには一応決算書がなぜか必ず面倒なPDF書類で付いていて、物好きだなと思いつつたまに眺めたりする。どの団体も事業収入がどうのこうのと胸をはって記しているけれど、そんな無駄事業を発注するのもどうせ親方の省庁がらみなんだろう。かたや主たる支出はというと、当然のごとく職員給与だ。晴れて天下りした偉い役人さまは蓄財に精を出し(つまり税金を食う)、ヒラの役人さんたちもこぞって食い扶持に群がる(つまり税金で食う)の図がありありと読み取れて、まいどまいど意気阻喪する(いや全部妄想です)。ときには「あれ、この年度だけで退職金が3億円? いったい誰だよ、何人で分けたんだよ」などと想像を膨らませずにはいられないのも隠微な楽しみ。というか、ニートを直接雇ったらどうなんだ?

いやいや、べつにいいのである。お金が国庫からふってわいてきてとにかく回っていくことそのものが、もしかしたら国の経済とかなりイコールなのではないかと近ごろ漠然と思うので、ぜんぜんいいのである。たくさんの役所がありさらにたくさんの役所もどきがあるおかげで、そこに居着いている人々や、そこからおこぼれをもらう人々が、こぞって暮らしを支えていけるのなら、大変けっこうなことだ。

こうなったら、日本国民全員が公務員になろうじゃないか。そうしてみんなで広く薄くゆるゆると仕事を分けあい財を分けあおう。社会主義というとソ連や中国などを思い浮かべて目をむく人が大半だけれど、わが邦における昨今の資本制賃労働競争の実態もまた、なかなかどうして目をむくものがあると思われる。そういえば、かつて日本は成功した社会主義国と皮肉られたこともあった。人類史上初めての本当にナイスな社会主義を、プロジェクトXよろしく実現できるとしたら、それはひょっとして我々なのかも。…こんなバカな発想がさほどバカとも思えないのは、梅雨のムシムシのせいか。「そんなことして、日本がどうなってもいいのか!」と怒られそうだ。でも、すでにもうかなりどうにかなってしまっているようにも見えるね。

若者自立塾について http://www.jiritsu-juku.jp/