東京永久観光

【2019 輪廻転生】

停滞前線、閉塞前線

「パートから正社員になりかけた矢先にクビを言い渡された」と知りあいからメールがきた。業績の都合で雇用と解雇を繰り返す会社だったのだと憤慨。同じメールに「こんなサイトを見つけた」とあり、それが『遊撃インターネット』(http://www.uranus.dti.ne.jp/~yuugeki/)だったのでちょっと笑う。しかし「今はこのサイトを参考に反撃したい気分」と。笑いごとではないのだった。

浮世の悩みはつまるところ金なのだとつくづく思う。金といえば、カンボジア外国人学校人質事件で犯人グループが車や銃とともに要求した現金が1000ドルだったというのは、なかなか胸に応えるところがあった。ニュースによれば、この外国人学校の年間授業料は27万円で、カンボジアでは公務員年収の約10倍とか。

アンコールワットは有名でも、シエムリアプという地名はアナウンサーが読み方をとまどう程度には知られていないようだ。私は観光したので「シェムリアップ」は忘れない。97年。当地の安宿はたしか1人1ドルで泊まれた。プラス1ドルで、うまくはないが昼夜の食事まで付いた。数多くの遺跡は、地元民が原付きバイクの後ろに乗せて回ってくれる。朝から出かけ炎天の昼にいったん宿へ戻って休んだあと夕刻まで一日中。これで料金は5ドル。私は2人旅だったので3人乗りしたわけだが、2人で8ドルだったか。ともあれ連続3日間ほど熱帯の森と荒野の道路をあちこち走った。腰や脚はどっと疲れたけれど、アンコール遺跡だけは、行って損したなどと言う旅行者は世界にただの一人もいないだろう。小高い丘から眺めたアンコールワットの全景などもじつに見事なものだった。営業トークがあまり上手でなかったそのバイクの運転手のこともまた忘れがたい。彼は教師をしていたが給料が出なくて辞めたのだと言った。それでこうしてバイクを元手にして稼ぐというわけ。この国では挨拶がわりなのかもしれないが、両親をポルポトに殺されたとも話してくれた。

一方、首都プノンペンでは有名な安宿キャピトルに滞在した。こちらはツインが5ドル(*訂正)だった。そばで見つけた飯屋に日本語を話す青年がいて、いろいろ案内してもらったとき、彼は一度警察官をしたことがあり月給は20ドルしかなかったと言っていた。公務員の年収2万7千円(*訂正)というのは、この月給20ドルの話とだいたい計算が合う。

子供の命や自らの命と引き換えの要求が1000ドルというのは、私たちからみればあまりに悲しい。しかしだからといって私たちは恵まれて幸せだなあともあまり思わない。それは結局、遠くの貧乏より近くの金持ちのほうがやたら気になるからだろう。生活や生存そのものが困難という状況がこの日本に存在しないわけではないという事実を見ないのは非常に問題ではあるけれど、多くの場合、それより熾烈なのは、実につまらぬ比較や羨望の問題なのだ。カンボジアの犯人グループだって、子息を27万円の学校にやれる外国人を羨ましいと思ったかもしれないが、そもそも2万7千円をもらえるだけの近くの公務員のほうを、より羨ましくより憎らしく思っていたとも考えられる。

近ごろ「こりゃもうテロしかないだろ」と内心感じることがあり、たまにここでも顕在化するのだが、先ほどのメールをふくめて、テロが本当に実行されてしまう確率が0%ではないのだと実感するときだけは、「やっぱりテロはいかん」と思い直す。いじめられた腹いせに爆薬を教室に投げこむ者以上に、いじめる者の味方など、私は絶対したくないのだけれど。

ポルポト派というとテロを通り越して虐殺のシンボルであり、また貨幣廃止のシンボルだろうか。そういうわけで、テロは禁止としても、だったら貨幣のテロ(廃止)くらい一度やってみたらどう、と軽く口にしてしまう。が、それはそれでいろいろ経済が困るのだろう。ポルポト派もじつは紙幣を刷っていたとかいう話もあるようだ。その遊撃インターネットにはその紙幣かもしれない画像が置いてある。→ http://www.uranus.dti.ne.jp/~yuugeki/porucash01.html ついでに → http://www.mayQ.net/kaheiron.html「論理そのもののような貨幣」

ところで。近ごろますますどかどか投げ込まれるジャンクメールを完全無視でそのままどかどかゴミ箱に捨てていて、ふと、厳重に管理されてビラの1枚も入り込めないコンクリートの巨大マンションみたいだと感じた。歴史教科書にもやっと載った95〜96年ごろを懐かしがりつつ、インターネットはつまり郊外化したのだと気づく。いやそれ以上にゲート化もじわじわ進み、それに応じてトラックバックやメールはビラ配りと化さざるをえないのかもしれない。そんなものごっそり排除して秩序を守れ、でもいいのだが…。そういえば「隣組の底力」とかなんとかのNHK番組が、落書きに続いて今度は迷惑ビラも私たちの町は一掃しましたと得意げにやっていて、これまたなかなか胸に応えた。

テロはとにかくダメ、人質や爆発物もまずはよそう、と呼びかけたい。そうすると、落書きしたりビラまいたりコメントつけまくったり見知らぬ人にひたすら話しかけたりするくらいしかないようにも思えてくる。それも今やテロ行為?

参考(になるかどうかわからない)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200505281646036


  
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これぞまさしく自爆テロの日本型オルタナティブと呼ぶべき?
http://d.hatena.ne.jp/toni-tojado/20050618
「ノドン・テポドンピカドンプロジェクト」