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【2019 輪廻転生】

無茶苦茶を貫く根拠はないがとりあえず貫く

町田康の小説『パンク侍、斬られて候』。

出たとこ勝負で最後まで押しきったという感もある。でもそれがあっぱれパンクというものか。時代も場所もなんとなく適当なので、「腹ふり」という無茶苦茶が、今にも身近に起こりそうな予感もして、非常に楽しい。

俗物たちの饒舌ぶりは明らかに筒井康隆の再来(いや筒井康隆は現役だが)。展開の恣意的にもみえる脱線ぶりは、北野武座頭市』と似ているようであり、またふと舞城王太郎『山ん中の獅見朋成雄』のいいかげんさが思い出された。

通常の時代小説は、現代の猥雑さを避けようとして清澄な過去に題材を求めるが、この小説は逆で、むしろ現代にパンクが欠如していることをこそ嘆いてわざわざ時代を遡ったのだ。――といった趣旨のことを高橋源一郎が書いている。なるほどそうかも。
http://book.asahi.com/review/index.php?info=d&no=5716

町田康の初期の小説がライブハウスにおける弾き語りの呟きに似ているとしたら、この小説は大ホールのコンサートでバックを賑やかに演出しながらそれでも同じテイストの歌を大音量で響かせた、といったところか。このコンサートがライブを超えて最高! とは思えないものの、十分に喝采した(私は町田康を読みに行って面白くなかった損した金返せと思ったことなど一度もない)。

パンク侍、斬られて候 ASIN:4838714904
座頭市 ASIN:B0000A9D4A
・山ん中の獅見朋成雄 asin:4104580023