東京永久観光

【2019 輪廻転生】

PKを外してしまったような人生?


青空が気持ちいい。見上げて歩いていたら道端にあった犬のあれを踏んでしまう。ギンナンの実だと思いたいが、その季節にはまだ早い。


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経済学思考の技術』(飯田泰之ASIN:4478210489

ちまたに経済の話は溢れている。ド素人がそれについていくための基礎と応用とにかく一夜漬け、というかんじの、非常に重宝しそうな一冊。

基礎というのも《人はインセンティブに従って行動する》《個人がアクセスできるフリーランチはない》《市場均衡は非常によい性質を持っている》といった次元。こんなの「フライを捕球されたら打者はアウトですよ」とか「ミとファの間は半音になってます、ほら」というくらいの常識中の常識なのだろう。だがそれを10回も20回も聞きながら、今回また「いや〜そうだったんだよな〜」と妙に得心してしまい、しかもなおタダ飯への抜け道を漠然と期待して改心しきれない私のような人は、ぜひともこの本をそばに置いておくべし。

著者は、冒頭から《経済学思考10のルール》というのを口を酸っぱくして述べる。上の引用はそのルールの3〜5番目だ。ということはそのまた前提があるわけで、何かというと《論理的に語らなければならない》など。すなわち演繹と帰納、逆・裏・対偶、必要条件と十分条件といった論理学のおさらいから入る。つまり、ちまたの経済話は経済の基礎はおろか議論の基礎も押さえていないことが多すぎるよ、ということらしい。しかも《経済学はごく少ない仮定(のみ!)を論理的に組み合わせることで結論を紡ぎ出すという点で、他の社会科学とは異なる際だった特徴を持っています》とも述べ、これもけっこう「へえ」だった。

さらには、《価格の調整は緩慢にしか行われない》など、これまたこれを知らないと出汁を取り忘れた味噌汁になってしまうみたいな重点というか盲点がいくつか叩き込まれる。そうして最後、こうしたにわか仕立ての経済理論を応用し、日本経済が世にも珍しい大停滞を続けるからくりとその処方箋を論じていく。

結論としてはリフレ策の正しさが証明される形。つまり構造改革路線じゃダメで、やっぱりインフレ目標策だというわけ。この結論、いよいよ「天動説は間違い、地動説が正しい」くらいに普及してきたのかもしれない。《デフレがデフレを呼ぶ……これは一種のバブルと言ってよいでしょう。物価水準の下落=貨幣価値の上昇ですから、言わば貨幣価値のバブルです》なんていう説明は、とくに鮮やかだと感じた。

しかしまあ、私は何ごとによらず整理されたロジックの体系には惹かれてしまうところがある。もっと実践も頑張ろう。経済は特に!